神戸地方裁判所 昭和52年(ワ)964号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
判文に引用された請求原因1ないし8項は次のとおりである。
「1 原告両名は、神戸市長田区名倉町二丁目五宅地1144.19平方メートルを所有するものであるところ、被告が、昭和四七年五月一一日以降右上地上に家屋番号名倉町二八番木造瓦葺平家建36.92平方メートルの建物を所有して、右上地のうち右建物の敷地部分78.743平方メートルを不法に占有し、ついで、同年七月、右建物を取りこわして右敷地上に木造瓦葺二階建居宅52.892平方メートルの建物(以下、本件建物という。)を新築して、引き続き右敷地部分を不法に占有していたので、原告らは、被告に対し、本件建物を収去して右敷地部分七78.743平方メートルの明渡しを求める訴えを神戸地方裁判所に提起したが(同裁判所昭和四七年(ワ)第八三六号事件)、原告ら敗訴の判決があつたので、大阪高等裁判所に控訴を提起したところ(同裁判所昭和四九年(ネ)第四三号事件)、昭和五一年四月二七日、仮執行宣言付の原告らの請求を認容する勝訴判決があつた。
2 そこで原告らは、右債務名義(大阪高等裁判所昭和四九年(ネ)第四三号事件の仮執行宣言付判決を以下、本件債務名義という。)に基づいて強制執行に着手したところ、被告は、その執行を不当に回避し、妨害するため、最高裁判所に上告を提起するとともに(同裁判所昭和五一年(オ)第九一一号事件)、大阪高等裁判所に対し、執行停止の申立てをなし(同裁判所昭和五一年(ウ)第四七三号事件)、昭和五一年五月二五日、その執行停止決定を得たが、最高裁判所に対する上告は、昭和五二年一月二五日棄却された。
3 被告は、前記最高裁判所の上告棄却の判決(同裁判所昭和五一年(オ)第九一一号事件)があつた後、原告らを相手どり本件建物は買取請求権を行使した結果原告らの所有に帰したとして本件債務名義について、神戸地方裁判所に請求異議訴訟を提起したけれども(同裁判所昭和五二年(ワ)第二〇五号事件)、昭和五二年八月三一日、請求棄却の判決がなされ、同判決は確定した。
4 原告らは、昭和五二年一一月二日、被告を相手方として神戸地方裁判所に本件債務名義の授権決定申請をしたところ(同裁判所昭和五二年(モ)第一四四一号事件)、その決定を得たので、同年一二月二日、本件債務名義に基づいて第一回目の強制執行をしたけれども、被告が「夫である朱壬倫が病気入院のため一人で子供五人の養育をし、いまただちに転居先もない」と述べて明渡しの猶予方を懇請し、執行が延期された。
5 被告の夫である朱壬倫は、本件債務名義について、原告らを相手どり本件建物が朱壬倫の所有であるとして神戸地方裁判所に第三者異議の訴えを提起するとともに(同裁判所昭和五三年(ワ)第一号事件)、強制執行の停止の申立てをなし、その強制執行停止決定を得たが、昭和五三年七月二七日、請求を棄却し、強制執行停止決定を取り消す旨の判決があつたので、これに対し、大阪高等裁判所に控訴を提起するとともに(同裁判所昭和五三年(ネ)第一三七一号事件)、強制執行停止の申立てをなし、その強制執行停止決定を得た。しかし、朱壬倫は、昭和五四年四月二七日、大阪高等裁判所において、控訴を棄却し、強制執行停止決定を取り消す旨の判決があつたので、最高裁判所に上告したけれども(同裁判所昭和五四年(オ)第八一七号事件)、昭和五五年一月二四日、上告棄却の判決があつた。
6 原告らは、昭和五四年五月一七日、本件債務名義に基づいて第二回目の強制執行をしたけれども、右執行に立会した吉川淑子が「夫である吉川潤が本件建物を同年三月ころ朱壬倫から使用借し、夫婦とその間の三子で居住している」と述べ、執行は中止された。
7 原告らは、本件債務名義について、吉川潤に対する承継執行文の付与を得て同人を執行債務者として第三回目の強制執行をしたけれども、右執行に立会した吉川淑子が「本件建物は吉川潤が占有しているが、ほかに転居先もない」と述べて明渡し猶予方を懇請し、執行が延期された。
8 原告らは吉川潤に対し昭和五四年八月末日まで本件建物の明渡しを猶予したところ、金斗七は、同年九月一〇日、原告らを相手どり本件建物の二階部分を昭和五〇年六月二〇日被告から賃借しているとして、本件債務名義について、神戸地方裁判所に第三者異議の訴えを提起するとともに(同裁判所昭和五四年(ワ)第九五四号事件)、強制執行の停止の申立てをなし、その強制執行停止決定を得たが、昭和五六年三月二七日、請求を棄却し、強制執行停止決定を取り消す旨の判決があつた。」
【判旨】
請求原因1のうち、原告らがその主張の土地を所有し、右土地上に本件建物が存在すること、原告ら主張とおりの一、二審判決がなされたことの各事実、同2のうち、被告が本件債務名義による強制執行を不当に回避し、妨害する意図を有していたことを除くその余の事実、同3の事実および同5のうち前段の事実は当事者間に争いがない。そして、争いのない右事実に<証拠>によれば、請求原因1ないし8の各事実(ただし、同2のうち被告が本件債務名義による強制執行を不当に回避し、妨害する意図を有していたとの事実を除く。)を認めることができる。右認定に反する被告本人尋問の結果は信用しないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
そうすると、被告は、原告らが大阪高等裁判所において本件債務名義を得たときから、原告らが本件債務名義に基づいて強制執行をするのを不当に回避し、妨害する意図をもつて、最高裁判所に上告を提起するとともに、大阪高等裁判所に執行停止の申立てをなしたものと断定することはできないが、被告は、最高裁判所において上告棄却の判決があると、原告らが本件債務名義に基づいて強制執行をするのを不当に回避し、妨害する意図をもつて、神戸地方裁判所に請求異議訴訟を提起したものと認めるのが相当であるから、被告の右提起は、その後の一連の訴訟行為とともに不法行為となるものである(なお、原告らは、請求原因1の第一、二審の裁判に被告が応訴したことも不法行為となる旨主張するところがあるが採用しない。)。そして、<証拠>によれば、原告らは、被告の神戸地方裁判所に対する右請求異議訴訟に応訴するため弁護士野澤涓を訴訟代理人に選任し、着手金二〇万円および報酬金二〇万円合計金四〇万円を支払うことを余儀なくしたことが認められるところ、右請求異議訴訟事件の性質に神戸弁護士会報酬等標準規程、日本弁護士会報酬等基準規程等を照らして考案するときは、原告らが右請求異議訴訟の手数料および報酬としては、その支払つた合計金四〇万円をもつて相当とするものと認められるから、原告らの被つた損害は金四〇万円を下ることはないというべきである。
(阪井昱朗)